現代の黄金の夜明け

西洋魔術に興味を持った人なら一度は聞いたことがある団体が黄金の夜明けだと思います。この団体は19世紀末ヴィクトリア朝時代のロンドンにて設立された魔術結社です。アニメや小説などでも取り上げられる団体ですが、元祖黄金の夜明け団はもう存在しません。後継団体である暁の星(Stella Matutina)やアルファ・エト・オメガ(Alpha et Omega)、聖黄金の夜明け団(Holy order of the Golden Dawn)ですが、この三団体もすでに存在しません。ですが、現代には黄金の夜明け団と名乗る団体は海外に存在しています。もちろん、これらの団体が元祖黄金の夜明けからの使徒継承権を受けていることはありえません。そもそも、黄金の夜明け団のテンプル設立が認めらるのは、三首領からの認可があってこそです。元祖黄金の夜明け団が崩壊したときには、三首領の一人であるロバート・ウッドマンは亡くなっており、ウイリアム・ウィン・ウエストコットは退団し、マクレガー・メイザースにいたってはロンドン本部から追放勧告を受けています。ですので、先にあげた後継団体も誰からも認められる直系系統というものはありません。そんな中で、現代も存在する黄金の夜明けとは何なのか?

ロバート・ウッドマン

 

 

ウィリアム・ウィン・ウエストコット



マクレガー・メイザース


現代の黄金の夜明け

 先の理由から現代に存在する黄金の夜明け使徒継承権ならびに正統後継団体は存在しません。ですが、海外には現在も黄金の夜明けを名乗る団体は数多く存在します。その中には、使徒継承権や正統性を主張する団体も存在しますが、そのほとんどは嘘です。では、海外で黄金の夜明けを名乗る団体すべてが、嘘つきなのかといえばそうではありません。確かに黄金の夜明けという「組織」を崩壊しましたが、「系統・伝統」までなくなったわけではありません。現在の黄金の夜明け系統の顔役ともいえるシセロ夫妻は、イスラエル・リガルディーという元暁の星団員であった人物を通して、黄金の夜明け系統に繋がった人たちです。ですので、彼らは元祖黄金の夜明けからの使徒継承権を主張していません。そして、彼らもそんなことに意味がないことを理解し、「血統ゲーム」という馬鹿げたものを批判しています。

 もちろんシセロ夫妻だけでなく、ほかにも独自のアプローチから黄金の夜明け系統に繋がった人物や団体が存在しますが、それらすべてを紹介するわけにはいきません。それらの団体には存在を公開しているものもあれば、非公開になっているものもあります。

 

日本の黄金の夜明け

 現在日本では黄金の夜明け団体は存在しません。もちろん、それぞれの見解や主張があるのも理解しているつもりですが、私はほぼ言い切ってしまっても問題ない状態だと思います。かつて日本でも黄金の夜明け関係の書籍や団体が存在しましたが、昨今はその勢いもなくなり、日本において黄金の夜明け系統は風前の灯であると感じています。それではと、団体がないのなら、独学でも黄金の夜明け系統を学ぼうとする者がいるかといえば、そのような人物はおそらく日本中探してもいないでしょう。先に出たシセロ夫妻による「Self initiation into the Golden Dawn Tradition」という書籍も存在していますが、邦訳されていませんし、この巨大な本を使用して忠実にカリキュラムや自己参入儀式を実践・研究している人物がはたして極東の地にて存在するでしょうか?答えはおそらくNoです。我が国おいて魔術界は狭い業界になっています。その狭い業界において、さらに黄金の夜明け系統の研究を行っている研究者はさらに少ないです。むしろ日本ではスピリチュアル界のほうが優勢な状態だと思われます。魔術界とスピリチュアル界の違いについては、またの機会に取っておくとして、このような状況が我が国における現状であることはほぼ間違いないでしょう。